黒部川ブルース
文:佐藤アキラ フォト:G太
男の旅は一人旅
サクラの道は帰り道
所詮通わぬ道だけど
釣れたバレたが交差点
2022年五月
四年ぶりに訪れた黒部川は
自然豊かな山々と豊富な雪解け水が
野望を抱く選ばれた太公望たちを試すかのように
男たちを翻弄していた。
『こんにちは!釣れていますか?』
『いやぁ全くダメですねぇ 何日か前に1本釣れたとは聞いていますけど』
ここ数年、北陸エリアのサクラマスは不調が続いている。
そして、ここ黒部川も例外ではないのだ。
今シーズン1本獲れるか獲れないか?
決して交わることのない水平線の様な緊張感が
逆にたまらなく好きだ!
とはいえ、その腕に釣れる感覚が宿るまでは集中力は続かない。
勝負と決めたGWはまだ始まったばかり。
焦ることはない。
【ミウラデザインの若きエース、古崎水晶君と】
【はるばる関西から差し入れ応援♪】
【おじさんたちの宴】
【仲間からのサプライズ!】
【まだまだ余裕で宇奈月温泉!】
そんなある日、福井の名人が!
【今期二本目の極太サクラマス!】
不毛な黒部川でサクラマスの匂いを嗅ぎつけ仕留める様は
まるで狼!流石です!
そんな彼にスイッチ入れられて
【俺も釣るぞー!】
【釣れる感覚はまだないけど】
【少しでも長く居られるように合間で仕事】
【だんだんヤバくなってきた】
GWを目一杯・・・いや
ちょっとオーバーして挑んだ黒部鱒
どこかで遡上のピークに出会えると
淡い期待を抱いていたのだが…
50を過ぎた体には1日中竿を振る体力もなく
生命感のない流れに気力も尽き果てた
しかし、なぜだろう?
敗北感はなく、やり切ったという感覚もない
ただ、頭の回転が遅くなった分、時間が経つのが早く感じた
そして気が付けば、あっという間に明日で最終日
少しだけ事態を理解できたのか
就寝前にハ〇キルーペのレンズ越し
いつもより丁寧にラインシステムを組んでいた。
【最終日は日が暮れるまで頑張ったのだが..】
若いころなら願かける
そんな気力もあったけど
今じゃ ゆく末みる様な
歳の流れの儚さよ
おわったん?
2022年はこれで竿を置くつもりでいたのだが
半世紀生きていると、何度か修羅場をくぐり抜けてきた
そんな往生際の悪さと、何とかしようとする思考回路だけは
悪い意味で身についてきた。
数日後、何とか考えぬいて都合をつけた黒部川
相当無理をしたためか朝寝坊
タイムリミットは昼までだ!
ダメ元とは思いつつ、目星をつけたポイントでキャストを繰り返すが
ケツに火が付いたら時間が過ぎるのがはやいことはやいこと!
最後は自分の中で一番のポイントで
ひと流し目はシャローをスライドアクションで
ふた流し目はリフト&フォールで
時計を見ると決めていた時間まであと二分!
最後は時間がないのでダイレクトに核心部へ
自分の思う一番の決めメソッドで!
その二投目だっただろうか?
まじか?
グンッ グンッ と伝わる重量感
えっ まじサクラマス?
頭では理解できていないが糸の先にはサクラマス❤
幸い体だけは反応していた
二度追い合わせを喰らわせて、ミウラデザインのロッドパワーで
黒部の早い流れに魚体を押し付けるようにねじ伏せる
ランディングネットは早い流れに押し返されながらも
難なくネットイン♪
【フロント、リア共にガッツリと】
おれ釣ったん?
【65cm4kgに迫る肉厚ボディのサクラマス】
・・・言葉にできない
そんな魅力がサクラマスにはある
そして・・・
仲間たち、黒部で出会った人たち
黒部川を守りこのチャンスを与えてくれた漁協のみなさん
感謝しかありません。
ありがとうございました!
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