アカメ物語5
~龍馬の詩~
佐藤 アキラ
近年、タックルの進化は目覚ましい。
新しい優れたルアーが開発され、そして消えてゆく。
高性能なタックルはさらに進化し、アングラーの優位性を高めてゆく。
私がルアーフィッシングにのめり込んだ平成の初め、すべては粗削りだった。
情報はとぼしく、タックルは海外製品などを代用し、専用のものは少なかった。
そしてフィールドは荒野のごとく道などはない。
全てが冒険だった。
その未知なる領域に魅せられ、多くのアングラーが夢と野望が渦巻くルアーフィッシングブームへと突き進んでいったのです。
古いアルバムを開くと、浦戸湾で最後に釣ったアカメの写真の横に04.10.23
と記してある。
当時、橋本氏と開発していたルアーでの釣果だ。
ただ、諸事情により開発はとん挫してしまった。
一晩に何匹ものアカメをキャッチできることが珍しくなかっただけに惜しまれる。
その開発には夢と野望があった。
今、私が使っているタックルやルアーは海外製品を除き、そのほとんどは
販売を終了しているが、
ヒラスズキ、アカメ、サクラマス、サツキマスなど私の愛するターゲットたち
と対峙するには十分な性能をもっている。
最先端の釣りは針の先のように先細っている。
敷かれたレールの先には何があるのだろうか?
無限に広がる荒野には何が潜んでいるのだろうか?
今の時代、かつての夢や野望は大きく変貌してしまった。
ただ、少し掘り起こせば古いルアーに込められた当時のビルダーたちの夢や野望が再現できることを願って私は模索し続けている。
そして、私たちが残すべきものは高性能なタックルでも優れたルアーでもない『夢』なのかもしれない。
その『夢と野望』は太平洋の水平線の先を見つめ続けている龍馬像が語っているような気がしてならない。
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