アカメ物語 1

 

~昭和の詩~

 

佐藤 亮

 

 

 

その巨体と風貌、そして突出した存在感

 

日本の三大怪魚の一つとして、そして西の横綱として今も君臨し続けている。

 

 

 

2017年夏、久方ぶりにアカメへの挑戦が始まった。

 

 

四国在住にありながら、諸事情により疎遠になっていた挑戦。

 

とある店長が『アカメがアカメが・・』などと私を焚きつけたんだ。

 

 

しかし、簡単に釣れる相手ではない。

 

『理屈だけでは釣れない魚』

 

その最たるものが赤目であることは紛れもない事実だ!

 

他の魚種とは別の領域に位置するアカメ

 

その領域は、常に霧でかすんでいる。

 

 

 

6月某日、その挑戦はアカメに敬意を払うことから始まる。

 

近年、タックルの進化は目覚ましい。

 

 

それをもって闇夜の霧を切り裂くのは容易かもしれない。

 

ただ、先人たちが創りあげてきた神話に登場する赤目は

 

その彼らの敬意によって守られてきた。

 

 

先日、他県からの挑戦者が遠征最終日に仕留めたアカメを持つ手が震えていた。

 

 

その感動は昭和にさかのぼる。

 

当時のタックルでアカメと対峙した彼らの苦悩と感動は今も存在し続けている。

 

 

私がルアーフィッシングにのめり込んだ平成の初め

 

多くのターゲットから感動を手にした。

 

 

しかし今、その感動を感じられることは少なくなった。

 

ただ、アカメだけはその感動が色褪せていない。

 

なるべく自力で釣りたいターゲットだから。

 

 

 

まず、敬意を払うには『昭和のロッド!』とはいえ

 

それを持っていないので、一昔前にカスタムしたベイトロッドをチョイス!

 

今は亡きスパイラルガイドだ!

 

 

リールはタイトル通り昭和物のスウェーデン製名機である。

 

そして昭和のヒットソング、サマンサ・フォックスの『タッチ・ミー』を聞きながら

 

四万十川を目指すのだ。

 

あとは自力だ!

 

『ラテス・ジャポニカス カモ~ン♪』

 

 

 

ミウラデザイン四万十出張所(移動式)目的地に到着!

 

人員1名なので自動的に私が所長か?!(所員募集中♡)

 

 

さて、最初のポイントは〇〇の岸側。

 

かつて良く釣れたのだが、すっかり地形が変わってしまった。

 

 

しばらくキャストを続けるも、しっくりこないのでメジャーポイントへ移動。

 

 

・・・あれっ 誰もいない?! (?_?)

 

 

かつてはこんなことなかったのだが・・・

 

とりあえず、キャストを開始。

 

しかし、数年のブランクでアカメの気配を感じることが出来なくなっていた。

 

 

照準を合わせるのに少し時間が必要かなと思いながら、1時間が過ぎた。

 

そして風もなく漆黒の闇が支配する四万十川で突如としてヤツが現れる。

 

 

数分前、ルアーチェンジしたミウラデザイン(アロウズ)レアにヤツは喰らいついたのだ!

 

 

至近距離でヒットしたアカメは20lbのナイロンラインを通して

 

強烈なヘッドシェイクがロッドに伝わる。

 

 

しかし、次の瞬間!

 

昭和の洗礼を受けてしまう。

 

 

『固着しかけたドラグワッシャーがアカメの引きに追従できない』

 

ラ イ ン ブ レ イ ク !

 

 

もちろん後戻りはできない。

 

しかし一瞬の敗北感が確信に変わる。

 

『アカメを手にするのは近い!』

 

次のチャンスは朝マズメに違いない。

 

 

少し休憩をはさみ、東の空が白みだす前にキャストを再開。

 

次第に明るくなり、わずかな流れによるヨレとボラたちが

 

赤目の気配を感じさせる。

 

照準は合ってきた。

 

 

そして日が昇る直前、突如目の前の水面が盛り上がり、次の瞬間

 

私の斜め後ろで激しい水しぶきとともに赤目が何かを捕食したのだ。

 

 

『イカン!食わせられない!』

 

しかし、そこに敗北感はなく、蘇った想像力が私のモチベーションを高めたのだ。

 

手立てがない訳ではない。

 

 

 

翌週、高いモチベーションのまま四万十川へ。

 

今回は、明るい時間帯に目星をつけていた遠浅で対岸が急深な岩場ポイント。

 

 

暗くなって直ぐに派手な捕食音が2度。

 

気配は濃厚だ。

 

 

いつバイトしてもおかしくない状況の中、移動しながらさらにいかにも!といった

ポイントに差しかかる。

 

 

その1投目、硬質なアタリと激しいヘッドシェイク。

 

間違いなく赤目だ!

 

 

しかし、最初のエラ洗いでフックアウト。

 

確かめると、アロウズ・レアの太軸に交換したフックが少し伸ばされていた。

 

 

掛かりどころが悪かったのか?

 

PEラインにGTロッドで挑んでいたのでなおさらだ。

 

気を引き締め次なるポイントは先週ラインブレイクしたメジャーポイントへ。

 

 

月の落ちかけを狙う。

 

早々に反応がある。

 

 

ピックアップ直後、薄明かりの中大きな波紋が広がった。

 

『もう少しのところで喰わせられない』

 

そして、〇氏のことを思い出す。

 

 

彼は、アカメに対する感度が非常に高かった。

 

何度か隣でアカメを狙ったが、私が彼に及ばないことを本当に肌で感じた瞬間だった。

 

 

その感度はどこから来るのか?

 

その原点は昭和の釣りにあるような気がしてならない。

 

 

 

アカメ物語2につづく・・・